患者の皆様によりそった医療を心がけています

扁平母斑の治療

いわゆる茶色のあざです。皮膚の比較的浅いところにメラニン色素が増えています。難治例も多いですが、レーザーを根気強く照射します。治療は3ヶ月ごとに行いますが健康保険が適応されます。場合によってはトレチノイン療法や脱色剤なども併用します。

症例1

レーザー治療前
1年後

症例2

レーザー治療前
治療1年後

扁平母斑のレーザー治療をお受けになられる患者さんへ

NIC社製・Q-Switched Ruby Laserを使用した扁平母斑の治療

インフォームド コンセント フォーム(抜粋)

扁平母斑・ベッカー母斑には、Q-スイッチルビーレーザー(以下Q-Ruby)を用いた治療が有効です。このフォームは、あなたがQ-Rubyによる治療を受けるかどうか、ご自分で意志決定をするための参考資料、および治療の同意書です。この用紙をよくお読みになった上で、さらに疑問に思われることがありましたら、どうぞ遠慮なくご質問ください。

Q-Rubyは、ほとんどのメラニン系のあざ(青あざ・黒あざ・茶色あざ)において有効性があります(あざ種類によって有効率に差があります)。いずれの場合でも治療は5~6回、あるいはそれ以上の回数が必要で、およそ3ヶ月に1度の頻度でおこないます。治療回数や頻度には個人差が有り、1回の治療効果にも個体差がありますので、全体に年単位の長い治療期間を要するものとお考えください。

現時点では、扁平母斑に対するレーザー治療の有効性は、著効率が全体のおよそ30%、全体の有効率でも60%弱に過ぎません。他のメラニン系のあざと比べると、かなり効果が劣るのが現状です。色が薄くはなっても完全には消えない場合や、かえって濃くなる場合、さらには全く効果が見られないことも少なくありません。したがって私どもでは、扁平母斑に対して、まずあざの一部にコイン大ほどテスト照射をおこないます。3ヶ月ほど経過を観察して、有効性が確認されてから、全体の治療にあたらせていただきます。この治療法は1993年に厚生省から高度先進医療としての認定を受け、1996年からは健康保険が適応されています。なお私共はあざのレーザー治療を1989年から行っており、昨年度当院では、延べ約800件のレーザー治療を施行しております。

Q1:母斑のレーザー治療とは?

Q-Rubyレーザー治療は、表面から約1.5mmの深さまで貫通する特殊な光線(レーザー光)を皮膚に照射する方法です。Q-Rubyは標的である皮膚表面の色素(厳密にはメラニン)を瞬間的に焼灼しますが、メラニンに対する選択性が良く、周囲の正常な部分へのダメージを最小限にしたのが特徴です。これによりメラニン系のあざの色を薄くしたり、消すことができます。

Q2:レーザー治療後の経過や一般的な副作用・合併症は?

  1. 痛み:当院では治療前に、レーザーを照射する場所に麻酔クリームを塗ります。さらにそこを約1時間密封ラップすることで、麻酔の効果を高めます。しかし麻酔のかかりやすさは患者さんによって異なるので、治療中に痛みを感じる場合もあります。通常この痛みは一過性で、小学生以上の患者さんの多くは痛みに耐えられます。しかし、痛みが強い場合には、注射による局所麻酔を追加することもあります。特に眼瞼部(まぶた)の病変では麻酔が効きにくいので、注射を追加します。なお小さなお子さんで、病変の範囲も広い場合は、全身麻酔が必要です。その際は当院の関連施設(虎の門病院皮膚科)で、入院・治療していただきます。
  2. レーザー照射後の状態:レーザー治療直後は、皮膚表面が軽いやけどの状態(びらん)になります。5から10日で黒っぽいかさぶたになりますが、その間は軟膏の外用が必要で、ガーゼやフィルムを貼って表面を保護することになります。またときに水ぶくれができますが、自然の経過です。
  3. 一過性の腫脹:レーザー治療直後から、ほぼ全例に照射部位の腫脹(はれ・むくみ)が生じます。特にまぶたでは内出血を伴うこともあります。このはれは3日前後で消えますが、その間は消炎剤の内服や照射部位 を氷のうやアイスノンなどで冷やす処置が必要です。内出血は10日前後で消えていきます。
  4. 皮膚の脆弱化:レーザーの照射部位やその周辺の皮膚は健康な皮膚と比較して外力に弱くなっています(脆弱化)。照射した場所をこすったり引っ掻いたりすると、皮膚が剥げ落ちてしまい瘢痕(きずあと)になります。治療後皮膚がしっかりするまでの約1週間は、ガーゼやフィルムで保護し、顔面の場合はお化粧もできません。入浴・洗顔に関しても医師の許可を得てからとしてください。
  5. 一過性の色素増強(褐色に変色):レーザー治療の1ヶ月後前後から、照射部位はしばしば色が濃くなります。この反応は照射部を日焼けした場合や、色黒の肌の患者さんには特に起こりやすいのですが、元来東洋人ではなりやすいものです。 これはレーザー治療の自然な反応で、小さな切り傷や擦り傷、やけど、にきびのあとなどが、一旦しみのようになるのと同じです。 大多数の患者さんでは 3~6ヶ月で軽快しますが、これを最小限にするために、レーザー治療を始めた部位は、少なくとも6ヶ月間は日焼け止めクリームを用いた日光の遮断と、ビタミンCやトラネキサム酸などの内服治療が必要で、場合により脱色剤やケミカルピーリングも併用します。しかし患者さんによってはごくまれに、増強した色素が6ヶ月以上消えにくい場合もあります。
  6. 色素脱失:同じ部位を繰り返して治療することにより、一部の患者さんに色素脱失(白色に変化)が生じる場合があります。色素脱失部位の多くは、3~6ヶ月で皮膚の色に戻りますが、戻らない場合やかえって色素が増強する場合もあります。
  7. 瘢痕化(きずあと):肥厚性瘢痕(傷跡の肥大化)やケロイド(赤く盛り上がった きずあと)を含めて、レーザー照射部位が瘢痕になるのは 極めてまれです。しかし前述のようにかさぶたを無理にはがしたりすると起こることがあります。瘢痕化を予防するため、治療後は別紙『レーザー治療後のケア法』をよくお読みになり、照射部位をていねいに扱ってください。
  8. 病変の残存:レーザー治療の途中で色素が点状に再生したり、まだら・ぶち状になることがあります。この変化は特に扁平母斑でしばしば見られ、治療の継続で消褪する場合と難治性の場合があります。

Q3:治療を行わなかった場合には?

レーザー治療を行えるあざ病変のほとんどは、整容的な見地から治療が行われるもので、患者さんが治療を希望されない場合でも、医学的に生命を脅かすような危険性のあるものではありません。あざの種類によっては加齢に伴い多少色調が変化することがあります。

Q4:レーザー以外の治療法は?

あざでは凍結治療や、外科的に切除し他の場所から皮膚を移植する方法もあります。