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帯状疱疹について

帯状疱疹は、以前にかかった水痘(水ぼうそう)の原因ウイルスが、再活性化して起こってくる病態です。典型的には、整形外科に行こうか、と思うような痛みで発症し、その近くの皮膚に発赤が現れ、水疱ができ始めます。発赤が出現してから約3週間ほどは、痛み(人によってかゆみ)がありますが、これは炎症による痛みです。その後に炎症を起こした神経により、神経痛が起こることもあります。この神経痛(帯状疱疹後神経痛)は、ときにより睡眠障害や血圧など身体症状を悪化させ、時により数年に渡り続きます。

帯状疱疹は、身体的、精神的なストレスにより、本来の免疫能が落ちたときに、発症すると考えられます。そのような心当たりがあるときに片側性(右だけ、左だけ)の痛みが起こった時には、医療機関を受診しましょう。典型的な皮疹があれば、抗ウイルス剤を開始し、痛みのコントロールができれば、帯状疱疹後神経痛のリスクを減らすことができます。

帯状疱疹は必ず痛いというわけではありません。時に初期の症状として、かゆみしか出ないこがあります。このときにかゆみに対してステロイド入りのかゆみ止めを使ったり、皮疹をがりがりひっかいてしまうと、後から激烈な神経痛が出ることが多いようです。

たとえ、初期から内服薬で治療しても病勢が強くて、皮疹が本来の側の反対側や、体の他の部位に出現することがあります。こういう時には、気づいたときに点滴で抗ウイルス剤を投与したり、全身状態が悪い場合には入院していただくこともあります。

たいていの場合、初期に良いタイミングで適切な抗ウイルス治療を開始し、炎症による痛みをコントロールすれば、たとえ神経痛が出現しても、それほど長引かずに済むことが多いようです。一方、残念ながら不眠を伴うほどの神経痛が出現した場合には、早めに痛みのコントロールができるように、種々の内服薬を併用しながら、傷んだ神経の回復を図ります。内服薬でも難しい場合には、局所麻酔薬を使うことにより痛みのコントロールを図ります。

現在、帯状疱疹の予防には、ワクチンを打つこともできます。50歳以上が対象ですが、2種のワクチンがあります。1987年に水ぼうそうのワクチンとして認可され2016年に帯状疱疹に適応拡大された「乾燥弱毒性水痘ワクチン」と、2020年に帯状疱疹予防接種用として認可された「シングリックス」です。予防効果は、後者の方が優れていますが、2回接種する必要があること、経済的に負担が大きいことが難点です。