ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)と胃がんの関係
*ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は、1980年代に胃炎の患者さんの胃粘膜から発見・培養された比較的新しい細菌です。この細菌は胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因となるため、ピロリ菌が陽性の胃・十二指腸潰瘍の場合には、抗生物質を用いて積極的に除菌をすることが、現在の標準的な治療となっています。
このピロリ菌の感染を調べる方法は、内視鏡で胃粘膜組織を直接採取する方法もありますが、現在はそれ以外にも、血液中のピロリ菌抗体を測定する方法や、特殊な試薬を飲んで呼気を分析する方法(尿素呼気試験)などがあり、比較的手軽に検査できるようになりました。
また近年、ピロリ菌は胃・十二指腸潰瘍の原因となるだけでなく、胃がんをつくりやすい素地となる、「慢性萎縮性胃炎(胃の慢性炎症)」を引き起こすと言われています。ピロリ菌は40歳以上の日本人では60%以上(!)の人が感染していると言われており、他民族と比べて日本人に胃がんの罹患頻度が高いことも鑑みて、この点は特に注意が必要です。
この慢性萎縮性胃炎には特有な症状がありませんが、この胃炎になっているかどうかは、血液検査(*血中ペプシノーゲン値)で簡単に調べることができます。*残念ながらまだ保険適応ではありません。
以上より当院では、血液中のピロリ菌抗体とペプシノーゲン値をチェックして、胃がんのスクリーニングをすることをお勧めしています。少量の採血だけの簡単な検査なので、胃のバリウム検査等に抵抗のある方でも安心してお受けいただけるものでしょう。