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にきび痕の治療

にきび痕(Acne scar)の治療:レーザーピール + ケミカルピーリング

*当院では「にきび痕 Acne scar」に対して、レーザー治療 (レーザーピール= Laser skin resurfacing)とケミカルピーリングを組み合わせた治療プログラムを作成し、1999年より施行しております。レーザーピール後は1週間前後のガーゼ保護が必要となりますが、その分大きな効果が期待できます。なお重症度によっては治療の一部に健康保険が適応されます(ケミカルピーリングを除く)。

症例1

治療前
治療後

症例2

治療前
治療後

CO2レーザーピールとケミカルピーリングを併用した「レーザースキンリサーフェーシング・プログラム」

※Nidek社製 CO2 Laser model-COL1040使用

インフォームドコンセント(抜粋)

はじめに

*あなた様の症状には、CO2レーザー照射(レーザーピール)とケミカルピーリングを併用した、レーザースキンリサーフェーシング・プログラムが有用と考えられます。この用紙は、あなたがこの治療をお受けになるかどうか、ご自分で意志決定をされるための参考資料、および治療の同意書です。この用紙をよくお読みになっていただいた上で疑問な点がございましたら、どうぞ遠慮なくご質問ください。

Q1. レーザースキンリサーフェーシング Laser skin resurfacingとは?

皮膚の表面にレーザーを均一に照射することにより、新しい皮膚の再生(表皮の新生と真皮コラーゲンの活性化)をはかる治療方法を、レーザースキンリサーフェーシング=レーザーピールといいます。この方法は、にきび痕や傷跡などに伴う皮膚の凹凸の修正に有効なほか、しみ・くすみ・こじわといった加齢現象に伴う種々の皮膚症状(光老化皮膚=photoaging skin)を改善することが可能です。当院ではこの治療法に、ケミカルピーリングを組み合わせた治療法(レーザースキンリサーフェーシング・プログラム)を、約5年前からすすめております。なおレーザー照射は3~6ヶ月の間隔で何回か行う必要があります。目安として、にきび痕の場合には5~6回の照射が、光老化皮膚の場合は2回程度の治療が必要と考えられます。治療回数や頻度は個々の症状や経過で異なりますので、ご相談しながら治療にあたらせていただきます。

  • 「にきび痕(Acne scar)」は、ニキビのあとが瘢痕化し、皮膚表面が凸凹とした状態を指します。CO2レーザーは皮膚の表層を均一に蒸散することができ、真皮コラーゲンの収縮および新生もはかられることで、この凸凹を少しずつ是正することが可能です。
  • 光老化皮膚(Photoaging skin)とは、老化や長期間の日光照射により、顔面などの露出部にしみや、ちりめんじわ(表面的な細かいしわ)、きめの粗造化(あらくなること)などを生じた状態をさします。しみは表皮の角化細胞が異常を来して本来新陳代謝で排出されるべきメラニン色素が、表皮内に沈着してしまった状態です。また、ちりめんじわやきめの粗造化は、加齢と紫外線の影響で、真皮上層部のコラーゲンや弾力繊維が変性して生じます。レーザーを照射して異常な表皮を排除し、新しい表皮を再生、さらに真皮上層のコラーゲンの新生をはかり皮膚のはりを生じさせることで、光老化を改善させ「皮膚の若返り」が期待できます。

Q2. レーザー治療の一般的な経過は?副作用は?

  1. 治療中の痛み;当院ではレーザー治療前に皮膚表面に麻酔クリームを外用します。外用後約1時間で表面の知覚はかなり低下します。レーザー照射中は痛みがあっても軽く済むでしょう。しかし麻酔のかかりやすさは患者さんによって異なるので、治療中に強めの痛みを感じる可能性もあります。この痛みは通常一過性で多くの方は耐えられますが、痛みが強く、耐えられない場合には注射による局所麻酔を追加することもあります。
  2. レーザー照射直後の状態;照射直後は照射部一面に軽いただれが生じます。表面的なやけどに相当しますが、自然の経過です。7日前後で一面に黒っぽいかさぶたを生じますが、それまでの間は軟膏の外用とガーゼで保護をすることが必要です。なお照射直後はひりひりとした痛みがあるので、30分程度アイスノンなどで患部を冷やす処置が必要です。
  3. 皮膚の脆弱化と赤み;レーザーを照射した部位は健常な皮膚と比較して外力に弱くなっています(脆弱化)。照射部位をこすったり引っ掻いたりすると、皮膚が剥げ落ちてしまい瘢痕(きずあと)を生じます。レーザー照射後は皮膚がしっかりするまでの約1週間はお化粧できません。照射部位の洗顔も医師の許可を得てから行って下さい。かさぶたがとれた皮膚は、ほんのりと赤い状態で、この赤みは1~2か月程度続きます。
  4. 一過性色素増強反応(褐色に変色);レーザー治療の1ヶ月後前後、赤みが少しずつ引いてくる頃に照射部位はしばしばメラニン色素の増強反応を起こします。これは日焼けした場合や色黒の肌の患者さんに起こりやすいのですが、日光の遮断を徹底しても東洋人では頻発(約60%)します。小さな切り傷や擦り傷、やけど、にきびのあとなどが、一旦「しみ」のように黒ずむのと同じです。この色素の増強反応はレーザー治療後の自然な経過で、大多数の患者さんでは3~6ヶ月で消褪します。しかし患者さんによってはまれに、増強した色素が1年近く残ってしまう場合もあります。
    このやっかいな色素増強反応を最小限に抑えるためには、レーザーピールの2~3週間後から、ケミカルピーリングを開始するのが極めて有効です(1クール5回、2週間隔)。このため当院ではレーザーピールとケミカルピーリングの両者を一体化したプログラムを組んでいます。これによってメラニン色素のコントロール以外にも、レーザーピールとケミカルピーリング両者の相乗効果で、さらに肌質そのものの改善も期待できるという大きなメリットが得られます。
    なお本治療には色素産生を押さえるビタミンCとトラネキサム酸などの内服や、日焼け止めクリームによる紫外線の遮断と、経過によっては脱色剤やトレチノイン、高濃度ビタミンC外用剤などを併用します。
  5. 色素脱失:同じ部位を繰り返して治療することにより、極めて一部の患者さんに色素脱失(白色に変化)が生じる可能性があります(1%以下)。色素増強と同じく色素脱失の多くは3から6ヶ月で、もとの色に戻りますが戻らない可能性もあります。
  6. 瘢痕化(きずあと);肥厚性瘢痕(傷跡の肥大化)やケロイド(赤く盛り上がったきずあと)を含めて、治療部位が瘢痕になるのは極めてまれです。しかし前述のように皮膚を引っ掻いてしまった場合には起こり得ます。瘢痕化の予防のため、治療後は別紙『レーザー治療後のケア法』をよくお読みになり、照射部位をていねいに扱ってください。

Q3. レーザー以外の治療法は?

にきび痕にはグラインダー(歯科で歯の治療に使用するものに近い)を用いて機械的に削る方法もあります。光老化治療については、マイルドなレーザー治療、光治療;IPL(フォトフェイシャル)という方法などがあり、お化粧をしながら治療していくことが可能な利点があります。ただしいずれも1回ごとの治療効果は極めて軽微ですので、治療回数と経費には余裕が必要です。しみに関しては別紙「しみの治療をご希望の患者さんへ」をご参照下さい。

Q4. レーザー治療を行わなかった場合は?

レーザー治療は整容的見地から治療が行われるもので、患者さんが治療を希望されない場合でも、医学的に重篤な危険性のあるものではありません。しみの部分は何年か放置すると、中央部に脂漏性角化腫という良性腫瘍が発生することがあります。にきび痕は年月を経ても、さほどの変化はありません。     

Q5. 治療費用について

当院では重度のにきび痕(Acne scar)に対しては保険を適応し、治療にあたらせていただきます(ケミカルピーリングを除く)。光老化 (Photoaged skin)に関しては保険適応外で、顔面全体のレーザー照射では1回100,000円+税となります。なおケミカルピーリングについては、別途2週間おきに1回15,000円+税の経費が生じます(1クール5回=10週間)。